憧れの尾瀬 山スキー(至仏山、景鶴山) 報告:柴門

 尾瀬山スキーの計画が上がった。行きたいなあ・・・・・雪の尾瀬。
 参加メンバーを見ると、思ったとおりのパワフルメンバーだ。
 経験の少ない私が大丈夫か・・・・。何日も逡巡する。
 ふと見た雑誌の星座占い。「案ずるより産むが易し。」だって。占いに押されて決心できた。

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日程: 5月1日(前夜発)、2日、3日。
場所: 尾瀬ヶ原キャンプ場から、至仏山、景鶴山、悪沢。
メンバー: パルプ・HiO・伊能・ごましお・りかあ・しん・柴門
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 家を出るとき「無理して怪我をするなよ。疲れると注意力がなくなるから。皆さんの楽しい休暇が台無しになるよ。」と言われる。いつも同じことを言われるが、今回は特に肝に銘じる。
 「はるかな尾瀬」まで行って何かあっては、話にもならない。かなりの緊張と共に、ピックアップ地点へ向かう。

 高速に乗って、順調に走ると、途中、中央道が事故のため通行止めとなっている。仕方なく手前のPAで仮眠することになった。軽く宴会をして、就寝。
 翌朝、鳩待峠へ向かう。お天気は最高。

 【一日目:至仏山】

 10時頃、みんなテント3泊分の荷物を背負って出発。すごい荷物だ。
 私は、自分の物しか持っていないのに、こんな姿でスキーをしたことがない。荷重が重くなると、制動力も大きくなるから、はたして止まりたいところで止まれるのか、不安でいっぱいだ。

出発準備 滑りより歩き


 山ノ鼻キャンプ場へ向けて下る。案の定、荷物に振り回される。下りだから楽だと聞いていたのに、これが結構大変で、少しのふらつきでバランスを崩しそうになるから、ものすごく時間がかかってしまった。前につんのめったり、後ろに転んだりして、思うようにいかないのがはがゆい。

 しんさん、伊能さんがそれとなく側にいてくださるが、長時間で、荷物がさぞ重かったことだろうと思う。スキーをはずしたり、履いたりしながらやっと到着したころには、お昼前になっていて、早く到着した皆さんが、テントも張って、すっかり準備をしていただいていた。

 昼食を済ませて、さっそく至仏山へ登ることになった。12時20分出発。

 気温がどんどん上がっているから、雪も溶けて、表面がズルズルしている。
 森の中を抜けて行くと、だんだん高度が上がってくる。ズルッと滑ると、心臓が止まりそうになる。

 この冬、突風に吹き飛ばされて、凍った斜面を滑り落ちたのが、トラウマになっている。
 高所恐怖症と、滑落恐怖症だ。なかなか、克服できない。眼下に斜面がダーッと広がっているのを見ると、落ちていく自分が見えてしまって、頭がくらくらする。バランスを失いそうになる。足がすくむ。


 みんな、さすがに早い。距離はどんどん離れて、見えなくなりそうだ。焦る・・・。
 伊能さんが近くにいてくださるのが、せめてもの救いだ。

 そのうち斜面がさらにきつくなって、滑る度に、心臓が止まりそうになって、呼吸を整えないと、怖くて足が動かなくなる。「落ちそう、落ちそう」と連発。

 「こんな雪では絶対に落ちないから。」と言われるが、落ちそうな気がするだけなのだから、始末が悪い。落ちそうを100回ぐらい言ったかもしれないが、伊能さんがその度に「落ちないの!」と答えていた。申し訳ありませんでした。

 「慣れだから・・・」と何度も言われたが、わかってはいるのだ。「慣れなきゃ仕方ないのだから、黙って歩け」と言われていることを。

 さらに、高度が上がると、歩幅が5センチぐらいになってしまった。下を見ないようにしようと思うが、どうしても見てしまう。ふらっと、後ろへ行きそうになる・・・。足が出ない・・・・。

 とうとう、紐を出してきて、繋いでもらう事になった。散歩嫌いの犬みたいだ。
 ところが、この紐のお陰で、絶対に下まで落ちないと言う安心感ができて、緊張が解けた。
すると、不思議なことに歩けるのだった・・・・。
 どうにかこうにか、山頂下の岩場までたどりつく。

 板を背負って降りてくる人が見えたので、私は、ここで板と、ついでにザックもデポすることにした。山頂からずれてるらしいので、岩とハイマツ帯を歩いて移動する。これも、スキー靴で歩くのは、難儀した。

 まもなく山頂かと思ったら、まだ向こうに壁のような雪の斜面が見えた。途端に、斜面にへばり付いたまま動けなくなっている自分が見える。わーっ、もう、無理!心臓が止まりそうだ。

 伊能さんだけ行ってもらうことにした。私は行ける所までと思いながら、少しずつ歩いていたが、上から声がした。「山頂はすぐそこだよ。」

 山頂は雪がなくてほっとした。でも勇気を出してよかった。これ以上望めないほどのお天気で360度の素晴らしい景色だ。


 雪をかぶった山って、なんて美しいのか・・・・・・。しばし見とれるが、帰りのことが心配になる。さっきの急斜面を降りなければならない。またまた、伊能さんがアイゼンを出してきて、つけてもらう。感謝、感謝。もう足を向けて寝られません。

燧岳 平ガ岳


 ハイマツと、岩の間を苦労して降りる。ようやくデポしたところへたどり着くと、もう私のスキーが準備完了してあった。本当に有難うございました。

 ごましおさんがザックを持ってあげると言って下さる。「自分の荷物ぐらい持てなくてどうする!」と思うが、すぐに考えを変えた。アクシデントの種は、私だけなのだ。
 時間は既に4時を過ぎて、斜面は日陰になってきているし、気温が急激に下がって、凍ってくるかもしれない。ぐずぐずしてはいられない。見栄を張るのはやめて、素直にお願いすることにした。

 4時20分滑降開始。大斜面を、みんな思い思いに気持ちよさそうに滑っていく。凄い!
 私も、後から、こわごわ付いて行く。


 登りの時の、恐怖感が少しずつなくなってきて、ほっとする。なんとも、気疲れした・・・・。
 山スキーを始めたばかりの時のほうが、怖いもの知らずというか、かえって平気だったかも。
 4時55分頃、BCに到着。あっという間だった。

 振り返ると、至仏山が美しい。さっきまであそこにいた?不思議だ。
 冷たいビールがおいしかった。


 外で夕食となった。私は雪の中で夕食なんて初めてだ。風もなく穏やかに、日が暮れていく。熱々の鍋料理が骨にしみた。


 【二日目:景鶴山】

 GPS軌跡はこちら                    

 朝の支度をしていると、パルプさんが「オコジョがいるよ」と呼んでくださる。
 可愛いらしい小さな白い姿が見えた。想像していたより、うんと小さい。
 みんなに見つめられて慌てたらしく、そのあたりをあちらでもない、こちらでもないと、木に登ったり降りたりして走り回って、消えた。

 6時45分、景鶴山を目指して、尾瀬ヶ原を横切る。霧でほとんど見えない。


 昨日とはまったく違う幻想的な尾瀬ヶ原だ。たくさんの人が霧の中を歩いているらしい。
 カメラマンが三脚を立てている。雪解けの水の中から、水芭蕉が覘いている。
 尾瀬ヶ原の真ん中をどこでも歩けるのは、この時期だけかもしれない。

 2時間歩いてようやくヨッピ橋に着いた。橋の踏み板がまだなくて、鉄骨だけだ。
 両側の手すりを持ちながら、慎重に足を運ぶ。雪解け水の流れが速くて、目が廻りそうだ。


 そこを過ぎると、見事な樹林の中を歩いていく。
 取り付きの手前で休憩。パルプさんがランチを忘れたことが発覚。

 9時半、いよいよ、尾根を登ることになったが、結構急坂で、スキーで登るのは大変だ。
 パルプさんがアイゼンに切り替えられるので、私もアイゼンにする。

 高度が上がっていく。下を見ると思っていた以上の急斜面だ。パルプさんの足跡を必死でたどる。
 またまた恐怖症が出てきた。
 ちらりと下のほうを見て、ゾーッとする。

 神経を集中して確実に登ることだけを考える。
 動悸と呼吸が速くなり、手のひらに汗びっしょり。もう、限界・・・・。

 最後は藪になって、板をくぐらせるために、這うように登る。スキー担いで藪は初めてだ。


 やっと皆さんが休憩しているところへたどりついた。ほっとして、座り込む。

 休憩後もしばらく、急斜面が続く。亀でも足を動かしていれば、登れるものだ。
 やっと、オオシラビソの茂る穏やかな尾根にでた。
 急な斜面はなさそうなので、アイゼンから、スキーに履き替えて尾根を行く。

 12時40分、山頂直下。絶壁だ。どうやら、裏側から登るらしい。
 行けば、すぐのようにも見えるが、亀の私には休憩時間がなくなる。
 帰りの急斜面が心配だからここでたっぷり休憩することにした。
 今日もまたとない良いお天気になった。靴を脱いで、おやつを食べる・・・・。

 尾瀬ヶ原全貌。雪解けの水が大きく蛇行している

平ガ岳 ケイズル沢から尾瀬ヶ原


 静かなゆったりとした時間。なんと贅沢なことか。
 さっきまでの恐怖感が嘘のように癒される。諦めないでよかった・・・・・。
 うれしさを噛み締める。

 通りがかりの人に道を聞かれる。地元の人らしく、遠くから来てくれて有難うと言われた。
 正面に日光の白根山、後ろを向けば、真っ白に雪がついてひときわ美しいのが平ヶ岳だと教えてもらう。
 彼らは明日は平ヶ岳に登るのだそうで、一緒に行かないかと言う。「め、めっそうもありません。」「いい山だよお・・・・」確かにそうだと思う。
 スキーで降りるのなら、くれぐれも雪崩に気をつけてねと、いうことだった。


 皆さんが、山頂から降りてきて、いよいよ滑降の準備をする。また、ごましおさんがアイゼン等、持ってくださる。急斜面が不安だから、また素直にお願いする。
 最悪、歩きで降りることになるかも知れないと思う・・・・。

 樹林帯の中の、だらだら斜面はあっという間に終わってしまった。
 いよいよ、急斜面の林。
 どこから降りればいいのか、おろおろする。
 来たいと言ったのは自分だから、降りないわけにはいかない。
 やっとパルプさんの跡を見つけて降りる。が、そこから先が問題なのだ。

 りかあさんが側で教えてくださる。イメージはバッチリ出来上がるけど、実際目の前には、木が密に生えている。行けそうにない。
 りかあさんに、「行って!」と言われる。下からも、「思い切れ!」と伊能さんが叫ぶ。
 自分でも「行くぞ」と思うが、足が勝手に斜面にしがみついていて、離れない。
 あれれ・・・・・さんざん足と戦って、無我夢中で清水の舞台から飛び降りた。


 後で聞くと、あの斜面は40度は絶対あったそうな。
 私の悲鳴が、至仏山の山頂まで聞こえたに違いないと言われた。騒音公害だなあ。
 まるで見世物小屋のお化け屋敷状態だったらしい。(本人、ほとんど記憶にありません。お騒がせしました。)

 ともかく怪我もなく降りられたので、第一目標は達成だ。
 後は、また尾瀬ヶ原を歩いて、歩いて、歩いて・・・・・・。
 途中シャーベット状雪の底なし沼に落ちそうになったりしながら、やっと山ノ鼻キャンプ場にたどり着いた。

 降りてきた尾根を、時々振り返りながら歩いた。あの上にいたのかと思うと、感慨深い。
 あれだけ怖かったのに、充実感のほうが大きい。
 BCに着いたときには、お腹がすきすぎて、ズボンが落ちそうだった。

 また、外で夕食となった。昨日よりも寒くて、後はテントの中で宴会となる。
 お天気は下り坂とか。明朝、撤収することになったので、残ったお酒を今夜飲んでしまわなければならない・・・というおかしな理由で、延々酒宴が続く。
 トイレに歩いて行くと、あちこちのテントから、トラが寝ているような大イビキが聞こえて笑ってしまった。
 りかあさんの凝ったお料理も出てきて、みんなで、頂く。
 なーるほど。料理の要領もわかったので、次回から私もお役に立てそうです。

 ようやく寝ようということになって、仕度をしながら、振り向くと、みんなもう袋に入ってさっさと寝ている。
 「す、すばやい!」   私一人、もたもたと、眠りについた。


 【三日目:悪沢岳】・・ですが

 朝、撤収して、鳩待峠まで戻ってから、悪沢へ滑りに行くことになった。
 3日目ともなると、疲れてきて、力が出ない。
 ストックを握る手も力が入らないし、後ろへよろけそうになっても、腹筋も背筋も、膝も効かないというか・・・・そのまま、ドスンといってしましいそうになる。

 行くかどうするか迷う。行けば途中でやめるわけにはいかないし、何があるかもわからない。
 鳩待峠まで戻る間考えていたが、やはり欲張るのは止めようという結論を出した。
 こんな状態で行っても、かえって迷惑かけてしまいそうだ。
 車まで戻って、皆さんを見送る。行ってらっしゃーい。

 どのくらい、経ったのか、うたた寝中にごましおさんから、全員戻ったとTEL。
 悪沢は、やはり期待どおりのところだったらしい。

 後はお決まりの温泉&食事。その後、大阪へ向かって、ひたすら走る。
 皆様、運転有難うございました。

 ずっと、怖かった、怖かったと書いてしまったけれど、思い切って参加させていただいて、本当に良かったです。充実感でいっぱいです。一生の思い出になりました。



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