不吉な前兆の、舟ノ川・入谷・桶側谷

前夜、王寺を出発。 金曜日の潮岬は27度の夏日。
もう夏だ!南紀まで行く事もなかろうと、ゆっくり前夜宴会もしたいし(^^ゞ辻堂から入り、高野 辻のヘリポートでビバークする。 滝の写真を撮りに来たとか言うグループの車が5台ほど停まっている。 何時来てもここは、人が多い。 6時前に起き出すと、カメラマンの集団はもう居なかった(^_^;) 雨は止んでいたが、少し寒い^^;標高1050mだから、こんなものかとテントをたたんで、そそ くさと出発する。 ところが、篠原の集落を過ぎ、林道に入ると、車がガタガタする。 おかしいと思って見ると、右後輪がパンク(..;) ゲ、「タイヤ買い換えたばかりやのに」とキンゴ君、ぶうぶう。

「タイヤあるんやろか?」え?、と、取扱説明書を出してくる。 な、な、な?「タイヤ替えた事ないんです」おい! 取敢えず、トランクの下をあけると、例の小さいスペアタイア。 こんなんで、林道走れるんかな〜 ホイールが外れない!「ホイール変えたんです」付属の工具では外せない。ドライバーでこじて外 す。 次はジャッキ。ジャッキはあったが、ジャッキハンドルがない(..) なんでやね〜ん!ホイルを外す工具で、こちょこちょと上げる。 ねじは、どっちに回したら外れるんやろ?右は順ねじ、左は逆ねじと咄嗟には思い出さなかった(^_^;) 大騒ぎして、たかがタイヤ交換に30分もかかってしまった。 予想通り、小さなタイヤでは、腹をゴリゴリこすりながら、入谷出合いに到着。

準備をして、出発しようとした時、単車のおっちゃんがやって来た。 「釣りか?」「沢です。おたくは、釣りですか?」キンゴ君が、余計な事を聞く。 「いや、券を売ってるんや。券買わんと入る奴が居るからなぁ〜」「え〜、釣りするのにお金要る んですか〜」また、いらん事を(-_-;)ムッとした表情のおっちゃん。 「沢屋でも、釣りするからな〜」「僕等は沢登りですし、竿持ってませんから」「去年、この沢入 って、一人帰ってけえへんかったな〜」アイテスルナ〜 何時までも漫才しそうなキンゴ君を促して、入谷林道に入る。 やっと、本番に入れる。
7時30分出発。

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    [日 時]2000年4月16日
    [天 気]曇り
    [メンバー]キンゴ、小山伏
    [地 図]南日裏、弥山
     【報  告】小山伏
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[林道アプローチ] 長い長〜い入谷林道歩き。こんな立派な道なんだから、車入れさせてくれたらええのに。 対岸の山腹には、コブシの白い花が咲いている。クリーム色の毛虫みたいな花を付けているのは何だっ け? 左から入る、長いナメ滝のルンゼや、50m程の岩の裂け目を落ちる滝を眺めながら、のんびり行く。 ナメラ谷を過ごし、林道が左に大きく曲がると、対岸に釜と連瀑が見える。 あれが、桶側谷だ。更に林道を辿ると、左から20m末広の形良い滝が落ちている。夫婦橋と書いてあ るから、さしずめ夫婦滝とでも言うのだろう。 (ここまで、1時間5分)

朝食がてら休憩するが、風が冷たい。カメラが動かない(>_<)と言う事は、氷点下近い? 朝から、縁起でもない事ばかり起こるし、この滝でも登って帰ろうかとも思うが、キンゴ君が行くと言 うので、しゃあないか(^_^;)

[遡行] 夫婦滝から、橋をくぐって本流に下る。 右から本流が入り、90度曲がって正面が桶川谷だ。 釜に5mの斜瀑がかかっている。水流の中にロープが垂れ下がっているが、左を登る。 上は、きれいな岩盤に、2m斜、釜を持った2条幅広のきれいな7m、2m、釜、2mで、回り込んで 来た林道の橋をくぐる。 2mの先に、両岸狭まった中、釜の奥に3mが落ちている。 先行しているキンゴ君が、釜の手前で、ギャっと言って後ずさりしてきた。 飛び石に釜の側に行こうと足を出した先に、猪が水に沈んでいると言う。 よく観ると、首のひん曲がった鹿であった。 ついさっき落ちたようで、口元からまだ血が流れていた。 鹿も落ちる壁か、本間、今日はやめろと言う事かな〜、とか言いながら釜を覗くと、滝の手前の岩から 右手のルンゼ状を攀じ登って、滝上のバンドを辿れそうだが、その岩に取り付くまで、たっぷりと水に 浸からなければならない。まだ濡れる気分ではない。 少し手前から右の斜面を巻きかけるが、流石鹿も落ちる斜面であるって、感心してる場合か(-_-;)足元 がザレていて乗り越せない。 結局、橋のたもとから大きく高巻いて乗り越し、立ち木を伝って斜面を降りるが、条件は同じ事。 滝のゴルジュの上に降りてくるが、トラバースできない。 滝の手前のルンゼ状の上の立ち木に、捨てシュリンゲがある。3m程の距離だがそこまでも行けない。 トラバースできそうな所まで登り、壁の下を伝うがその先3歩程が、足を置けばザラザラと崩れていく。 もう、やめよかなぁ〜(・_・) ハンマーで土をかいて足場を作って、なんとか回り込む。俺のハンマーは土掘り道具にしか使ったこと がないなぁ(^_^;) と、顔を上げると、対岸の壁に、末広50mの見事な滝が、直接本流に落ち込んでいるのが眼に飛び込 んで来た。

本流には、ゴルジュの奥に、何段にも重なって、滝が白い瀑布を落としている。おお、せめてあの50 mの滝下まで行こう。 気分を取り直して、立ち木を掴んで降りて行く。まだ、壁の上である。 5m程先の立ち木の下に河原が見えている。あそこからなら、懸垂できそうだが、そこまでトラバース 出来ない。 仕方ないので、下がどうなってるか分からないが、手元の立木からザイルを垂らす。 ザレた斜面の、落ちそうな石を蹴落として、垂壁に身を踊らす。 ラッキー(^_^)v15mの懸垂で、滝の上流の岩盤に降り立つ事が出来た。 たかが3mの滝に、小一時間もかかってしまった(^_^;) ゴルジュの先に、まだ林道が見えている。はぁ、今日はどこまで行けるやら・・・ 支流の大滝は、直下からでは全貌は見えない。やっぱ、斜面から見なきゃ(^_^;) 右手は30mの壁の底。小滝を越えて行くと、釜を持った6mの滝。 右は垂直の壁。左の壁を登ると、更なる壁との間にバンドが通っている。 狭いゴルジュの底には、S字8m、釜を持った2m、大きなチョックストーンの下で滝音がしている。 その上の3mと、結局降りれないまま、ゴーロに降り立った。 広くなったゴーロを右に曲がると、2mの滝の正面にガレ谷が入り、谷は左折。 左から支流が入り、その奥に10m程のナメがかかっているようだ。 本谷には、巨岩が目立ち始め、6m、岩間の多段8m、巨木の横の2条3m、2段3mと高度を上げ、 右に大きなゴーロの枝谷を分ける。 多段3m、大岩、多段3mと小滝を越え、ゴルジュの中の5mは左を登り、大岩の間の3m斜瀑を3つ 越えると、左に支流が右に折れこんでいる。 その奥の方には、200mの嵒が聳えていた。 (ここまで、2時間20分)

ここで一服する。 たまに太陽が顔を出すが、一向に暖かくならない。 おでんに、熱いコーヒーを飲んでも、体は冷える一方。 こんなはずじゃなかったのに(;_;) 兎に角、抜けてしまわなければ帰れないので、先を急ぐ。 岩間の小滝を越えて行くと、先行するキンゴ君がワ〜っと叫ぶ。なんと、残雪が残っていて、それを踏 み抜いたようだ(^_^;)寒いはずだ。 大岩の横の3段5m、多段3mで、右にルンゼを分け、多段3m、2m、下が洞窟になった2条3m、 岩間の小滝、3m、多段3mで、左から2段20mが落ちていた。奥はゴルジュになっている。 キンゴ君は左の鋭いガリから登ると言うが、その奥にも壁が続いて降りれそうにない。 右手も、5m程上に濡れた壁が立っているが、上に樹林帯があるので、なんとかなるだろう。 ガレた急斜面を登って、壁の下に立つ。斜めに登って、木を掴んで一登り。 背の高さ位の壁を乗り越えたら、又、木が続くが、体が後ろに振られそうだ。一歩立ちこんで、上の木 を掴むが、フニャっと曲がってきた(゜.゜)こんなのに、体を預ける気になれない。 右手の濡れたガリに回り込んで見るが、手をかけた岩がもろもろと剥がれて来る。 水があるので、30cm程先に細い木の根が伸びて来ている。 信頼できるかどうか分からないが、一歩立ち込んで、えいやっと掴んでいる。 生きていた。ホッ(^_^;) 次々と伸びている木の根を持ち替えて5m程登る。 左は背丈程の壁の上が樹林帯だが、ハーケンも打てないほど岩がもろい。 正面は、泥のつまったチムニーになっている。詰まった所で、樹林に逃げれそうだ。 ところが、足を突っ込んでねばっていると、少しづつずれ落ちて行く。こんな所で詰まってしまったら、 帰れない。行くしかない。 体を寝かせて、泥んこになりながら、這いずり登り、不安定な大岩を抱くように回り込んで、やっと樹 林帯に辿り着いた。 木に抱きつき、ホ〜ッと、大きく息をつく。 要所にシュリンゲを垂らして来たが、このチムニーはどうしようもない。 立木からザイルを垂らすが、あらぬ方向にしか流れてくれない。ま、何とかしてくれるだろう(^_^;) 待つ事しばし、キンゴ君がぶつぶつ言いながら登って来た。 「泥んこや〜。ザイルの方向が違う〜」うん、その通り(^^ゞ 木を掴んでトラバースして降りて行くと、右手に雪のいっぱい詰まったルンゼが入っていた。この先、 どないなるんやろ(>_<)

ゴルジュの中の4m、2段10m、ナメ3m、5m、3mと快適に登って行くと、正面に、更にたっぷ り雪を詰め込んだルンゼが鋭く登っている。 あんなとこ登られへんぞ〜(>_<) と、小滝を越えると、谷は左折し、2段15mが落ちていた。 一度は良かった(^。^)と思ったものの、右も左も壁。滝身を登るしかない。 右から取り付き、滝の中をたっぷりシャワーを浴びて潜り抜け、左から滝身に向かって乗り越える。 もう、やけくそ(^_^;) 谷は右折。3m、多段5m、3m、大岩が鎮座し、3m、8mで右にルンゼが入り斜瀑15m。 これも滝身を登るしかない。なんとか右手に逃げようとするが、意地の悪い事に、ホールドは全て水の 中。 5m、斜3mで、左の壁に10mが落ち、ツララの下がった斜瀑3m、斜5m、岩間の5mで、ゴルジ ュを抜けた(^。^) 雪がチラチラし始めた。もう、いや! 左にガレのルンゼを入れ、谷は右に曲がる。 その先で、左に谷が入り、こちらの方が水量があるから本流であろう。1400m地点である。 もう、滝場は終わりみたいなので、早く帰りたいよ〜 (ここまで、2時間15分)

[もう、帰ろう] 真っ直ぐのゴーロの谷に入り、キンゴ君はぐんぐん高度上げて行くが、小山伏はもう詰める気はない。 キンゴ君を呼び止め、右の斜面から回り込んで、1520m辺りの尾根に乗り上げると、そこは銀世界 であった。 雪と言うより、氷がしっかりと木や草に張り付いている。 (ここまで、35分)

なんとか、日のある内に降りれそうだ。 50m程下ると右手に尾根が降りている。こちらは桶側谷に戻るので、西に向かって真っ直ぐ降りる積 りが、歩き易い崖の上を辿っていた。 去年、ナメラ谷に来た時、充分迷ったので、慌てることなくそのまま200m程下り、右手の谷に降り て、次の尾根に乗り換える。 しばらく尾根を辿り、傾斜の緩い所から更にその向こうの谷筋に斜めに降りて行く。 谷が平らになったところで、崩れた林道に、降り立った。 (ここまで、1時間40分)

4時半。よう歩いたなぁ〜 [林道を下る] あとは、気楽に林道を下るだけ。 なんかかんかあったけど、結構楽しかったなぁ〜と話しながら下って行く。 もうそろそろ出合いと言う所で、バサバサと言う音に驚かされる。雉でも飛んだのだろう。 その先で、キンゴ君が、連想したのでもあるまいが、小雉を撃つ。 その間に小山伏が先行すると、右手の壁の上から、ゴロゴロゴロと、派手な音を立てて、イノシシがこ ろこんで落ちてきた(@_@) 目の前5m程。 イノ公は、素早く体勢を立て直し、こちらに向かって一歩二歩踏み込んでくる。 咄嗟に止まれず、小山伏も一歩踏み込んだ所で、目が合う。 一瞬ひるむ。イノ公も、目をまん丸に見開いて、驚いたように身をすくめる。 犬は目をそらすと飛び掛ってくるなぁ〜。犬とイノシシは仲間やったっけ?突っ込んできたらどうしよ う?入谷の崖に飛び込んだら、どっかの木に引っ掛かれるやろか? 負けたらあかん!と、ぐっとこらえると、向こうも同じ事を考えてるのか、身を乗り出す。こら、あか ん(>_<)と、覚悟を決めた所で、イノ公の視線が小山伏の肩口へ動いたと見ると、踵を返して5m程下 り直角に曲がって、足をロードランナーのように回して、崖を駆け上って行った。 体を回すと、キンゴ君も呆然として立っている。どうやらイノ公は、多勢に負勢と見たようだ。 彼に向かって歩きながら、小山伏は「×△○・◇・・」と喋ったそうだ。 彼の言によると「それは、宇宙語か?」と思ったそうな(^_^;) その後、イノ公は、拳大の石をばらばらと落として、山に入って行った。 なんちゅう、一日や(-_-;) 心臓どきどきのまま、出合いの橋に着いた。 (ここまで、1時間15分)

[後記] 着替えて、小さいタイヤで腹を擦りながら林道を下り国道に出る。 スタンドも工場も開いてないので、そのままとろとろと帰る。 「自分と来たら、いっつも寒いなぁ〜」「それは、こっちが言いたいですよぉ〜」 そうか、お互いにそう思っているのか(^^ゞ十三日位の月が、冷え冷えと輝いている。 なんかかんかあり過ぎたが、思い返せば、実に楽しい谷であった。 久々に、ちゃんと谷に行ったような気分だ。 心地よい疲労感に浸りながら、家路を急ぐのであった。

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