三越川・外和谷、「少年の遺書」

小山伏は、5月1日から韓国の谷である。 本来なら、準備に余念の無いところだが、前々から、キンゴ君と約束していた。 30日は早く帰りたいな〜、濡れたくないな〜と、邪念いっぱい(^^ゞ
沢装備は、仕方が無いので一式新調したが、ザックだけは慣れた物を使いたい。これだけは、死守しな ければ(^_^;) と、直前になって、キンゴ君が、弟を連れて行きたいという。 登山といってもハイキング程度で、当然、谷は初めて。まだ、19歳。秋に結婚を控えて、色々悩む事 があるらしく、谷中で焚き火でもすれば気も晴れるのではないかと言う、兄心である。 渡りに舟(^^ゞ
初心者には何て言っても、天気と滝。それも、ガンガン溯れるのと、デッカ〜イの。
南紀で、短くて、楽しめそうな所と、遡行図を引っくり返して、外和谷に決めた。 ピークがないのが不満だが、30日は早く帰るぞ〜と、どこまでも、動機は不純(^_^;)

……………………………………………………………………………………………………………   
   [日  時]2000年4月29日〜30日
   [天  気]晴れ、曇り時々晴れ
   [メンバー]キンゴ、少年、小山伏
   [地  図]発心門
   【報  告】小山伏
……………………………………………………………………………………………………………

 

[アプローチ]
土曜日の朝、王寺を出発。 少年は、ジャニーズ系の、清々しい若者であった。キンゴ君は、彼の事を「我門君に似てる」と言うが、 小山伏は我門君なる者を知らないため、なんとも言えない(^^ゞ 五条から169号線に乗り南下。
少年は、既にすごい山奥に入った気になって興奮している。 十津川の緑色の淀みにも、綺麗きれいの連発。 萩のT字路を右へ曲がり、三越川に沿って走る。途中で川沿いへ降りる道に入り、奥番へ向かうのだが、 降り損ねて、発心門を過ぎると、守衛も立つ程のすごい人出(@_@) 熊野古道のツアーらしい。ゲ、こりゃ堪らん。と、道を間違えた事に気付く(^_^;) 戻って、川沿いに下り、中下番、奥番を過ぎると道はダートになる。 道が大きくカーブする所の下で、川に15m程の堰堤が、緑色の淵に水煙を上げているのを見て、少年 は歓声を上げた。 こんな所で喜ばれたら、堪らんなぁ〜(^_^;)
その先の橋のたもとで駐車して、2時前出発。 崖の上には、蜜蜂獲りの丸太が据えてあり、上手く分巣したのか、蜜蜂が出入りしていた。

【一日目】
[テン場まで]
橋の左から、杣道を行く。 10分程で、谷に小さな堰堤と大きな堰堤が二段になって掛かっている先の尾根を降りる。 谷は、くねくねと曲がり、何も無い河原歩きが続く。 キンゴ君と小山伏は、不満たらたらだが、少年は結構感激しているみたいだ。 この谷ははずれだったかな〜と思い出した頃、右手の壁から、5m、10m、8mと連続して滝が落ち、 谷が大きく曲折して、左から20mの滝を持って支流が入ると、やっとゴルジュが出てきた。 (ここまで、45分)
その先で、丸い淵を持った6mの滝が落ちる。右手を登って、廻り込んでガリに降り、滝上のバンドを 伝って抜ける。 初心者が居るので、気が抜けない所だ。 連続する小滝と釜をへつって、左に3段15mを掛ける支流を過ごし、小滝、左から3段6mの支流で、 ゴルジュを抜け、多段3mを越えると、河原に台地状の抜群のテン場があるが、時間もあるので、もう 少し行く。 その先で、小さなゴルジュに、綺麗なナメが走る。 谷は河原となり右折し、3mナメ滝を越えると、左手に崩れた小屋跡があり、谷は左折する。 正面に二本の支流が入り、時間も程よいので、ここをテン場とする。 (ここまで、1時間25分)
斜面をかいて、平らにならしテン場を作る。少年は「これぞアウトドア」と大喜び。 倒木を集め、のこぎりで挽き、火を入れるまで、「ワイルド、ワイルド」と叫びながら獅子奮迅の働き をしてくれた。 ここまで喜ばれると、面はゆい物がある(^_^;) もうすぐ20歳だし、10月には結婚もする事だから、酒も大目に見て、お馴染みの宴会! 気持ちよく飲み、気持ち良く食べ、星空に歓声を上げ、小山伏も20歳は若返った気分だ)^o^( いいな〜、若者は〜 すっかり出来上がった小山伏は、先におやすみ(^^ゞ 歳の離れた兄弟は、その後、何時までも語り合っていたようだ。

【二日目】
[林道まで]
少し曇っているが、まずは上々。7時過ぎに出発する。 すぐ、右手に石垣が現れ、小滝を越えて行くと、正面に、30mの真っ直ぐの滝が浅い釜に落ちていた。 周りは壁に囲まれている。良い滝だ。 右から大きく巻き登って落ち口に立つ。 ゴルジュの中、3条2m、ナメ滝5m、2m、2条2mで、形の良い2段6mが現れる。これは、右手 のチムニーを登る。 更にナメ滝5m、小滝と続き、連続して現れる3m前後の滝を6本ほど夢中でこなし、ゴルジュを突破。 7mの左を巻くと、右からガリが入り、正面に、立派な20mの滝が落ちていた。 (ここまで、1時間5分)
左を高巻くと、上はゴーロになる。 岩間の小滝を越えて行くと、右から支流が入り、6mの滝が谷いっぱいに落ちている。 おいしそ〜。ザックを濡らしたらあかん事を忘れて、真中からシャワーを浴びて、左へ岩角を伝って登 ってしまう(^_^;)念のためザイルを垂らすが、少年は軽快に登ってきた。 堰堤のような2m、2m斜瀑と小滝群を越えて行くと右に支流が入り、その先の7mを乗り越えると、 左から形の良い20mの滝を持って支流が入る。 ミニゴルジュの中、岩盤を伝う3mナメ滝3本をこなすと、右の壁から滝が落ち、2段9mが狭まった 中に落ちている。 下段の右を登り、上段も右に逃げるしかないが、岩がもろい、木が腐っている、騙しだまし立ち込んで、 腐った木の根を引っ掴んで攀じ登り、シュリンゲを3本繋いで引き上げる。 こんな所、MOGU師匠に見られたら、怒られそう(^_^;) あとは、ゴーロの中の岩間に掛かる滝を乗り越え、ぐんぐん高度を上げて行くと、右から2段10mの 支流が入り、河原には番線が落ちているのを見る。 更に3本ナメ滝を越えると、目の前にでっかいトタンの波板が落ちていて、その先で波板の土管から、 チョロチョロと水が流れている。 あっけなく、林道に出てしまった。 (ここまで、1時間35分)
日差しが暖かい。山腹には桜が咲いている。 ザックもうまい事、乾いてくれた(^^ゞ 少年も、晴れやかな顔をしている。キンゴ君の目論見は成功したのだろうか?

[下山]
林道はそこで終わっているが、そのまま踏みあとを辿ると、山腹にしっかりした道が登っている。 楽チンに終わったと思ったのに、200mも登らされて尾根に乗った。1022と898ピークの中間 地点だ。 (ここまで、25分)
あとは、尾根を辿って、奥番まで下るだけ。 尾根上は、立派な赤松のプロムナードになっている。久々に、日本の原風景を見たような気分だ。 小山伏は足が遅いので、支尾根に入らないように言い含めて、先行してもらう。 小さいピークを越えて、次のピークが、676ピークだ。 ところが、手前のコルで地図を落としたようで、拾いに行ってる間に、二人と離れてしまった。 ピークの先は、拾いなだらかな尾根になっている。右手に赤テープが幾本もぶら下がっている。嫌な所 にテープがついているな、と思いながらも、忠実に尾根を辿って下って行く。 ちゃんと見れば踏み跡は分かるが、人があまり通ってないらしく急斜面に落ち葉が積もり放題。 落ち葉に足を滑らして転び、木の根にけつまづいて転び、掴んだ枝が折れて転び、右足で左足を踏んづ けて転び、凡そ、誰にも見せられない転びのオンパレードに一人苦笑しながら、奥番の一番奥、猿田彦 大神の狛犬の所に降りて来た。 結局、二人には追いつけなかった。 (ここまで、1時間20分)
まだ、1時前だ。予定通り(^_^)v 林道を、のんびりと戻って行く。 シャガの白い花がいっぱい咲いている。ツツジが山腹に赤い花をつけ、蜜蜂が舞っている。日差しを楽 しみながら、橋の所まで戻ると、キンゴ君が深刻な顔をして歩いて来る。 (ここまで、15分)

[遭難騒ぎ]
「弟、抜きました?」「ええ?一緒と違うんかえ?」「ええ」 キンゴ君は、やはり、あの赤テープに沿って降りたそうだ。 600m付近で、右尾根にはっきりした踏み跡があり、350m辺りで尾根を乗り換えると、立派な道 が橋の右手に下りて来ている。 キンゴ君は、弟は小山伏と来ていると思い、小山伏は、二人は先行しているものと思っていた。 そう言えば、600mを下った辺りで、右手で声がしていた。恐らく、その辺りではぐれたのであろう。 道さえ外さなければ、必ず何処かに下って来れる筈だから、キンゴ君が辿った道の左か右か、どちらか の谷であろう。 とりあえず、奥番から登り返す事にする。
300m辺りで、水平に道が通っている。これが恐らく、キンゴ君が尾根を乗り換えた所につながって いるはずだ。 キンゴ君に、この道を行ってもらい、小山伏は尾根を登り返す。 兎に角降りてくれば、この3本の道のどこかに辿り着くはずである。 結局600mまで登り、コールを繰り返すが、反応はなかった。 奥番に下り、猿田彦大神に無事を祈念して林道を戻る。 今から二人で谷筋に入っていたんじゃ日が暮れるし、なにしろ食料がない。 『沢雪山歩』に召集をかけても、明日は月曜日だし、何人集まるか・・・ 範囲は、ごく狭いから、うろうろしていなければ、簡単に見つかるだろうが・・・ とりあえず、喉が渇いた。 あ、明日の韓国行きも、断っとかなきゃ。一人残って、電話ついでに買出しに行くか。ビールが飲みた 〜い てな事を考えながら、橋の近くまで戻ると、キンゴ君が思い詰めた顔でやって来る。 「手がかりあった?」「・・・帰ってます」お〜い!もっと晴れやかな顔で言え〜! 「興奮して、叫んでますわ」

[少年の遺書]
彼の話によれば、キンゴ君にはぐれ、350m辺りで、尾根を乗り換えずにそのまま下ったらしい。 その先で崖が落ちているので、斜面をトラバースしながら谷に下り、滝を巻いて、必死で降りたようだ。 標高差にして、約200m。 登り返す気は、無かったと言う。 そして、堰堤の所に出て来た。 実は前日、この上で谷に入ったのだが、気がつかなかったようだ。
ここで、少年は、遭難したと思った。 ノートを出し、遺書を記たため始めた。 何を書いたものかは、分からない。 だが、書いている内に、フッと、石田純一の顔が浮かんだ。 「二人の女性を愛して、なぜ、いけないんですか!」と、ふざけた事を言う野郎がのうのうと生きてい て、なぜ、俺が死ななきゃいけないんだ〜 少年は、決然と遺書を破り捨て、生きて帰る為に谷を下り始めた。 壁をへつり、淵に飛び込み、胸まで水に浸かって下って行く事、恐らくは10分程であったと思うが、 彼にとっては永遠に続く程に感じられる時間であった事は、想像に難くない。 そして終に、入谷の時に渡った橋を見た時には、感極まって叫んでいた。 そこで、感激の兄との再会となるのである。 ま、無事でよかった(^_^;;;;) で、表題にある「少年の遺書」は、公開不可能となりました。めでたし、めでたし。

[後記]
反省、の一言です(^_^;)


ウィンドウを閉じる