蓮川・野江股谷は初恋の谷

蓮の谷となると、奥ノ平谷、江馬小屋谷となる。 野江股谷は、江馬小屋谷の下流で分かれる谷で、出合いの美しさは江馬小屋谷以上である。 しかも、江股ノ頭と言う三角点に突き上げている。 なのに、あまり沢屋の口頭に上らないことを見ると、それ程難しくはないのだろう。 実は、小山伏にとって、この谷は、ずっと心に秘めてきた谷で、言わば、片思いの初恋みたいなもの (^_^;)
何回か仲間に誘いをかけてみたが、余り名前を知られていないので、誰も乗って来ない。 単独となったが、お陰で、しっとりとした谷行きを楽しむことが出来た。 少々、思い入れが過ぎるかもしれないが、まずは、報告。

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[日  時]1999年11月30日〜31日
[天  気]快晴
[メンバー]小山伏
[地  図]七日市、宮川貯水池
【報  告】小山伏
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[アプローチ]
早朝、王寺を立ち、高見トンネルを抜け、次のトンネルを越えたところで、加杖坂へ右折。 辻堂橋から千石林道へ入り、江馬小屋谷の橋を渡って、出合いまで入る。 左に橋を渡って、江馬小屋谷、真っ直ぐが、野江股谷だ。 準備して、6時半入谷。

[イガミ滝を越えるまで]
谷は、あくまでも優しく迎えてくれる。 岩間に掛かる小滝を飛び、釜を持った3条2mを越えると、右の壁から7mの滝が落ちる。左岸には、 低い壁が立っている。 2m、小滝、3m斜瀑は真中を越え、釜を持った2条5mを右から越えると、大岩の重なる中、2条5 m斜瀑、2条3mと楽しく行く。 と、谷が右折し、右の壁から5mの滝が落ちているが、水は石の中に吸い込まれて、流れは無い。 この辺りから両岸に壁が立ち、ローカとなる。 ローカの先で、谷が右折している。 右岸に渡り、淵の左を巻き登ると、谷は奇怪な姿を見せている。 ローカの底の淵の先に、右から、そして左から壁が張り出し、織り重なって、その下は洞窟のようにな っている。
その奥で、釜を成し、岩を割って20mの不動滝が落ちている。 そのまま、左を巻き登って滝を越えると、もう一本、釜を持った20mのイガミ滝が落ちていた。 これもまた不思議な姿で、井戸のような中に落ちているのである。 その一方が、スリットに切り開かれて、流れを吐き出している。 左手の壁の下を辿って、滝の左の壁に取り付く。 が、ホールドが細かく、5m程登って詰まってしまった。 戻ろうと、後ろ向きにクライムダウンするが、右足が滑りバランスを崩す。左足と左手中指で危うく踏 みとどまるが、暫くは張り付いたまま身動きが取れなかった(^_^;) 完全に気力喪失。初恋の彼女の気性は激しい(^^ゞ
結局、30分近くも張り付いたまま、そろりそろりと、身を引いたのであった。 不動滝の上まで戻り、折り返すように右岸の嵒を大きく巻き登り、ローカの中の小滝を三つ程過ごして 谷に降りる。 (ここまで、1時間30分)

[3連続、2条の滝下まで]
ゴルジュの中に、二段の釜を持った3条5mの珍しい容の滝で、ローカを抜ける。 3m、5mのきれいなナメ滝を越え、左壁から5mが入り、苔生した岩に流れる3mナメ、大岩の間を 落ちる3m斜瀑二つを左から巻き、岩間の小滝をカーブして越えて行くと、左右に壁が立ち始め、5m を回り込むと、左から10mの鶴小屋滝が落ちていた。
滝の下半分は、左から張り出した壁に隠され、下の釜に白い泡が立っているのが見えるのみである。 左岸は、岩小屋になっている。 ここは、正面のガレから巻き登り、上の淵を越えた所からローカに降りる。
ローカの中に、右から滝が落ちているのが見えていたが、その下まで行くと、左からも大岩を持って3 mが落ちていた。 水量は同じ位。右は、3m、3mと滝が登っている。左は、ローカが先で右折して続いている。 迷ったが、左の方が面白そうなので、こちらに入る。 大岩を越え、淵を越える。幅広段々3mの手前から、左の壁の上に登ると、立派な道が通じていた。 これを辿ると、丸木橋がローカを渡っている。それ程古くもなく、しっかりしているので、それを渡る と、道は山腹へ登っているようだ。
ローカを覗くと、2条ナメ5mが楽しそうなので、壁を降りる。 谷は右岸に岩小屋を形作って右折し、釜を持った6mは右を巻く。 次の6mの左を行きかけるが詰まり、右の壁を登り、次の大きい釜を持った3mの先で谷に降りる。 谷は河原になり、右から10mを入れ、2mを越え、逆Yの字3mの所から、又ローカになった。 これを左から越えると、正面に20mが入り、本流は右折している。 6m斜瀑が岩の下に落ちる。右の壁の上に登り、小滝をローカの中に見下ろし、対岸から10mが入る 所で、右岸の方が楽しそうだなと眺めていると、一陣の風が吹き渡り、谷間に枯葉が舞い踊った。 その先で谷に降り、谷がくるっと回ると、釜を持った8mの扇を少し開いた形の姿良い滝が落ちていた。
ここは、左のスラブを巻き登り、3条2m、左から5mと入ると、谷は平流となる。 左からガレを入れ、広いゴーロに右から段々の滝が入る。 大岩に、釜を持つ3条小滝に濡れるのを嫌い、右手の壁を巻く。 ナメ、右から3段10m、ゴーロの小滝と平流を行き、釜を持った3m斜瀑から、左右に壁が出てきて、 二つ、釜を持つ小滝を越えると、正面に濡れたスラブ壁が立ちはだかった。 (ここまで、1時間40分)

[二又まで]
谷は右に曲がり、ローカの奥で左に曲がっている。 2条5mの滝が釜に落ち、その上にも積み重なるように釜を持った2条5m。 この釜には、右から10mの滝が入っている。 その奥にも釜があり、左から滝が落ちているようだ。 右手のガレから壁の上に登り、10mの滝の上を渡ると、一番上の滝は、チョックストーンを持つ、2 条8mだった。 三つの2条の滝が、一つのゴルジュの中に積み重なって、落ちているのである。この谷は、面白い形の 滝ばかりだ。 左からガレを入れると、谷は又、ローカとなる。 右岸のハングした壁からしずくが垂れ、そこから右折したローカを覗くと、小滝をかけ、その先で右折 している。 暗く、濡れたくないので、右から壁の上に巻き登り、ローカを覗き込みながら行く。 谷は曲折を繰り返し、小滝に5m斜瀑、大岩を配した淵に5mナメ、3段6m、大岩が詰まる先で、や っとローカがおわり、谷に降りる。 岩間の小滝を越えると、左からきれいな支流が入っている。地図上810mの二又だろう。 (ここまで、40分)

[源流まで]
小滝を越えて行くと、手前の岩で隠れた所に、釜を持った6mが落ちていた。 右のガレから巻き、上のこれまた釜を持った4mを左から巻くと上部はナメになっていた。 先は、広いゴーロとなって、伏流になると、二又になる。 右はゴーロが登り、左を取ると、再び水が流れ出した。 岩間の小滝を幾つか過ごし、3m、3m斜瀑、ナメの辺りで、行く手に長瀑が見えた。 近づくと、左に大岩が詰まり、その下にナメが回りこむと、すきっとした容の2段20mが落ちていた。 右は壁、左も壁になっているが、それに沿ってガレが登っている。 大岩を回ってガレを登っていくが、なかなか折り返すところが無い。 50mも登り、壁が立ったところでやっと折り返し、尾根を乗り越す。 と、上にも、5m斜瀑、5mと二つ重なって壁の間に落ちていた。 左の広い壁が登れるかと取り付くが、見た目より角度があり、ホールドも細かい。左へ、左へ逃げて、 結局大巻になってしまった(^^ゞ (ここまで、1時間35分)

この先は、苔生したゴーロとなり、少し先で水も涸れている。 まだ、1時半。 ピークまで1時間半程か。そこから江馬小屋谷に下降して、どのくらいで水が出てくるんだろう?1時 間半として、5時前。 となると、薪集めてテント張って、飯炊いてると、日が暮れるなぁ〜 やめ(^^ゞ 快適なテン場とは言えないが、ここを一夜の宿と決め、とりあえず飲みだす(^^ゞ

[お泊り]
明るいうちに食事も済ませ、5時半を過ぎたら急速に闇が降りてきた。 焚き火で酒を温め、ちびちびやっていると、色々な思いが頭を過ぎる。 嫌な事や、苦い思い出は消え去り、嬉しかった事や、楽しい事ばかりが残っていく。 信貴山にもよう登らなかった小山伏が、こんな所で焚き火をしているなんて信じられない。 こんな遊びを教えてくれた、MOGUさんや佐野さん、ほんたびさんに感謝、感謝。 例によって、充分睡眠を摂って、ほの明るさに目を覚ますと、5時であった。 天頂に、半月が明るく、照り輝いている。 焚き火を熾して、ゆっくりと仕度を始める。 6時を過ぎると、急速に夜が明けていった。 6時20分出発。

[江股の頭まで]
ゴーロを登って行くと、すぐ水が切れた。 右の山腹で、やたらと落石の音がする。目を凝らすと、ウリボウが鼻面で地面を掘っていた。 二又になり、左に大きく曲がっていく。 と、奥に3段15mの滝が落ちている。水は、落ちた所で岩に吸い込まれている。右を巻き登ると、落 ち口の先で水が湧き出していた。 苔生したゴーロを登って行くと、正面に壁が石垣のように立ち、その前に、二抱え以上もあるヒメシャ ラの巨木が一本聳えている。 こんな太いヒメシャラは始めてみた。 と、左手を振り向くと、それに対抗するように、ホウの巨木が覇を競っていた。 壁を左に避けて登っていく。 ゴーロだが、岩は苔生していて、ブナ・ヒメシャラの疎林の中を、落ち葉を踏みしめて登るのは、一向 苦にならない。 振り向けば、山腹は綾錦に飾られていた。 苔生す巨岩に、木の根が絡み、黄葉を見せている。絵葉書のようだ。 一登りで、なだらかな稜線に出ると、立派な縦走路が通っている。 目前に、池小屋山への尾根が折れ曲がっている。 その先のピークは国見山か。奥には、台高縦走路が朝靄の中に沈んでいる。左して、江股の頭に立った。 (ここまで、55分)
小広い山頂である。飯高の村界尾根の中では、魅力的なピークの一つだ。

[下山・ナンノ木平まで]
稜線を辿り、次のピーク手前の岩は北面のビューポイントだ。 正面に1114Pの鋭いピークをはさんで、岩屋口山から、ナメラ山、入道ケ塚が稜線を延ばしている。 ここから見上げる、江股ノ頭は堂々としている。 ピークは、実に広々としている。 1226Pから北西尾根には立派な登山道が通っており、飯高山岳会の真新しいテープが巻かれてあっ た。 とりあえず、この尾根を少し降りたコブには、巨木が聳え、「ナンノ木平」の標があった。 (ここまで、30分)
予定では、この辺りから江馬小屋谷へ下る積もりだったのだが、余りにも良い登山道なので、このまま 下ることにする。

[野江股谷出合いまで]
ヒメシャラとブナに囲まれた抜群の尾根を、北北西に下る。 と、下から二人連れが現れて、お互いにびっくりする(^^ゞこんな所で人に会うなんて。 出合いから2時間で登ってきたそうだ。同じ山域を楽しむ人が居るのは嬉しいものだ。小山伏には珍し く、しばし立ち話をする。 次のコブで北東尾根になり、1120m辺りで、北北西尾根に曲がって急降下する。 ここから、右が植林になり、980m辺りで、尾根を外れ北北東に植林道を下る。道はしっかりしてい て、ジグザグに降りていくと、850m辺りで、炭焼き釜跡と熊の檻があり、右にガレ谷が沿うように なる。 720m辺りで、水が流れ出すが、左の支谷を渡り」山腹を巻くようになる。 尾根を巻いて、ゆるやかに降りていく。 周りは自然林で、5つ程も尾根を巻いて、岩が現れた所で折り返して、ジグザグに下っていくと、50 mほどの壁の下に出た。 この壁の裾を巻く形で巻いて行くと、眼下に出合いが見え、ジグザグに降りて、出合いの橋に降り立っ た。 (ここまで、1時間20分 )
まだ、9時45分(^^ゞ

[後記]
野江股谷は、思い通りの優しい谷であった。 初恋の君は、心憎いばかりの気配りを見せ、一時も飽かせることなく、帰りに、裏口の鍵まで、そっと 手渡してくれた。 「会いたくなったら、何時でもいらっしゃい」と言っているようだ。

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