北又谷  報告:のーきょー

 

 今年のお盆山行は,日程調整の結果,8月15日夜発,16日から18日の2泊3日となった。2泊3日山行に適した沢登りを探したが,全員まだ行ったことがなくて,2泊3日で,オロロにも会わず,ヒルにも会わず,というと,行き先がなかなかない。いくつかの案が浮かんでは消え,とうとう最後に,北又谷に行こうということになった。かなり難しい沢なので,行けるのだろうか。雨が降っておらず,おそらく平水よりも水量が少ないだろう。今年は最終兵器Leoがいるので,登攀での突破は大丈夫だろう。ということで,北又谷に決定。

 北又谷に行く以上,できれば,本流を詰め切って,犬が岳に登り,栂海新道を日本海に下山したいところだが,2泊3日では日数が足りない。
 主に京都雪稜の記録相川さん達の記録を参考にして,越道峠(こえど)から入山し,吹沢谷に入って,相又谷を降りて,朝日小川ダムに戻る。というルートにした。両パーティーともに2泊3日で抜けているので,これなら水量次第ではわれわれでも行けるかも。

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【日程】2013年8月16日(前泊)〜18日
【山名】北ア 黒薙川 北又谷
【行程】
1日目(8月16日)
5:00 朝日小川ダム発
5:40 越道峠を出発
6:30 1030mコルから下降開始
7:30 北又谷に降りる。
8:00 魚止滝
10:00 大釜淵
11:15 又右衛門滝
12:30 又右衛門滝の高巻き開始
16:00 谷に戻る。
18:30 テントサイト着

2日目(8月17日)
7:00 出発
7:10 急流の長淵
10:00 中瀞
11:30 白金滝
12:00 漏斗谷出合
12:40 三段の滝 左岸高巻き
15:00 谷に戻る。
15:30 雪渓をくぐる。
16:00 3m滝。右壁直登
17:00 サルガ滝手前の河原で泊まる。

3日目(8月18日)
5:30 出発,サルガ滝の高巻き開始
6:00 谷に降りる。
6:15 吹沢谷出合
7:10 吹沢谷二俣
9:50 北又乗越
11:00 相又谷 最初の懸垂
11:50 2回目の懸垂
13:10 懸垂完了
13:55 二俣
15:10 鉄筋堰堤の懸垂
15:45 ゴルジュ。滝が出現
16:50 またも滝。これは下れない。林道を探す。
17:10 林道へ。
18:10 朝日小川ダムへ下山完了
【メンバー】Leo、いるか、のーきょー
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 前夜,草津PAに集合し,朝日小川ダムに向かう。ダムの駐車場で仮眠。

●1日目
 朝日小川ダムで予約しておいたタクシーと待ち合わせ。ダムから越道峠まではタクシーで35分くらい,8300円。小川温泉の横にゲートがあるが,タクシーは通行証(とゲートの鍵)を持っていて通れる仕組み。越道峠からの登山道は,定期的に刈り開きが行われている感じの登山道である(踏跡というような頼りないものではない。)。

 

 1030mコルから北又谷に下る。降りられないような滝も出てこず,わりにあっさり北又谷到着。

 

 ちょっといくとすぐ魚止滝。釜はかなり深く,滝も5m程度はありそう。かなり復活してきている。釜を泳ぎ渡り,上陸して一旦集合。右壁を草付沿いに斜上し,バンド状を落ち口に向かって斜降し落ち口へ。

 次の2条3mは,渡渉して真ん中の岩に取り付き登った。

 雨が降っていないので,水量は少なめ(岩についた苔の感じからは,5cm前後,平水より少なめというところか。)なのだろうが,それでも激流には違いない。「水が重い。」といるかさんが言っていたが,まさにそんな感じ。基本的にへつりで越えていく。Leoさんと私は重量と身長があるので,こういう局面は得意だが,いるかさんは,すぐに浮いて流れていってしまうので要注意。Leoさんと私がいるかさんをはさんで前後に立ち,前進する。厳しいトラバースは空身で行ってザックを引き上げたりも。

 大釜淵。滝の流れに巻き込まれると危ないらしい。反転流があるので,それに乗り,左からそっと接近。最初のトライでうまく滝身すぐ左のリッジに取り付くことができた
 

 いるかさんはすんなり引き上げることができたが,Leoさんを引っ張っているとき,Leoさんの体が滝の流れに接近しすぎ,あわてて一瞬ロープを引いたところLeoさんが水没。ロープをゆるめて流れにまかせると無事脱出できた。危ない危ない。2回目は流れにもって行かれないように注意してロープを引き,無事にLeoさんを引き上げることができた。ああいう場合,あわててロープを引いて引き上げようとがんばり,かえって水没させてしまう事故があるらしい。水没の瞬間(ほんの一瞬だったのだが。),Leoさんの脳裏には過去の出来事が走馬燈のように蘇ったそうな。


次は難関の又右衛門滝。
 

 記録をみると登っている箇所は2箇所。滝に近いほうが登りやすそうだが,近づけそうにない。より右側を攻めることにし,Leoさんが,トライ。釜を泳ぎ渡り,フックを掛け,シュリンゲをつないで,簡易アブミを作り,立ち上がる。フィフィがないので,ハーネスをフックにつないで体勢を安定させられない。腕力で何度もトライしているが,見るからに大変そう。フックはたびたびはずれ,そのたびにドボンしてやり直し。1時間近くトライしたが,断念。

 泳いでより滝身に近いところまで達することができれば,登れそうな箇所がある(京都雪稜の記録では,登っている。)。私が岩にそって近づくべくやってみるが,水流が強くあと1mほどが近づけない。はまちゃんから借りておいて足ひれがあれば,届いただろうが,重さを懸念して持参しなかった。私の泳力では泡立つ水流を遡ることはできない。残念。滝に向かってまっすぐ泳ぎ,流れに流されて辿り着くのかも知れない(もし,次の機会があれば,トライしてみよう。)。

 高巻き決定。左岸を高巻くことにしたが,これが大変な高巻きになった。(悪い予感がして,水を汲んでいったのがせめてものなぐさめか。)

 両岸が切り立ったゴルジュなので,どんどん上に追いやられる。少しトラバースし,下ることにするが,懸垂でしか降りられない。Leoさんが懸垂をセットする。

 浮き石が落ちる。懸垂中やロープ回収の際,落ちそうな浮き石は,あらかじめ落としておかないと危ない。足で蹴飛ばして浮き石を片っ端から落とす。はるか下から「ドボン」という音が遠く聞こえる。その上で懸垂開始。しかし,落ちた浮き石がロープ(8mm×30mを2本持参。)のうちの1本にあたり,ロープが切れていた(ほんの少しつながっているだけの状態)。Leoさんは状況を確認しつつ非常に慎重に下るので,ロープ切断点手前で懸垂下降を停止し事なきを得たが,困ったことになった。運の悪いことに,30mロープは,ほぼ真ん中で切れていた。2本のロープをつないでも,45m(つまり,最大22.5m)しかないことになるし,ロープの長さを最大限生かすためにはロープのつなぎめを越えねばならない。懸垂をセットし直す必要が出てくるが,容易に止まれるところならともかく,空中懸垂でそれをやる自信はない。シャントを持ってくるべきだったか。ロープが届いているのが確認できる範囲内で,且つ,次の懸垂ポイントになる立木があるところを見つけ,小刻みな懸垂を繰り返すしかない。しかし,河原に降りる最後の懸垂(対岸の様子から,最後が厳しい懸垂になることが予想できた。)が,今あるロープでできるのか?

 5,6回は懸垂を繰り返しただろうか。途中,立木を求めてトラバースも。切れたロープを立木に固定し,1本懸垂の練習も。Leoさんが6mmの補助ロープを持参してきていたので,最悪の場合,8mm30mで1本懸垂をして,谷底に降りる。しかし,8mm1本で懸垂するとATCでは十分ブレーキが掛からないらしい。Leoさんがロープに安全環付カラビナをダブルムンターで3つセットし(自分でダブルムンターを間違えなくセットできればいいのだが,できない。),各自それを使って懸垂。なお,ダブルムンターは,要救助者を背負って懸垂する場合などに用いられる技術のようだ。

 ハラハラしたが,最後に,切れたロープと健全なロープをつないで,20m弱の懸垂をして,無事,谷に戻ることができた。
 

 本当にぎりぎりで,切れたロープの端が,30cmほど水に浸かっていただけだった。
 

 最後の懸垂は,途中5mほどが空中懸垂になるのだが,最後に懸垂したいるかさんのエイト環に,セルフビレイがひっかかり,運の悪いことに空中懸垂部分で動かなくなった。自己脱出してほどけばいいのだが,ザックが重く体が引かれるせいか,なかなか降りてこられない。最終的にはLeoさんが登り,脱出を介助して(空中といっても岩に手が届きそうな場所まで降りていた。)ようやく3人とも北又谷に復帰。
 

 ああ,しんどかった。わりと早く又右衛門滝まで来たと思ったが,もう夕方である。
 その後も結構シビアなゴルジュ遡行が続く。

 トラバースがシビアだったので,ザックをおいて空身でトラバースして,あとでザックを引き寄せようとしたら,流れに逆らって引き上げることができず,往生した。結局,Leoさんがザックを押し上げつつ上がってきてくれて回収できたが。

 又右衛門滝までは順調だったが,又右衛門滝の高巻きで時間と精力を使い果たした。又右衛門沢を越えたすぐ上流に小さな河原があり,かろうじてツエルトを2つ張れそうだ。すぐ先に「急流の長淵」がある。これを越えるのも大変そうで,下手をすると日が暮れる。今日はあまり進めなかったが,まあ,仕方ない。そこで泊まることにした。それにしても,すごい高巻きだった。

●2日目

 朝イチから難所。急流の長淵。右岸をへつっている記録が多く,流れに飛び込んで左岸に渡ってみるが,へつりにかかる前に,Leoさんが,左岸を小さく巻けるだろうとのこと。行ってみたら,そのとおりだった。朝イチからずぶ濡れになり,くたびれもうけ。
 

 しばらくいくと流れの様子がおかしい。雨は降っていないはずだが,急に増水し,笹濁りに。水温も急に低下した。Leoさん持参の温度計で測定したところ,16.7℃あった水温が急激に低下し,8.3℃に。冷たい。スノーブリッジの崩壊だろうと思われた(その後,崩壊したスノーブリッジの残骸が出てきた。)。

 しばらく,へつって越えての遡行。昨日を思うと穏やかな遡行が続く。
 

 中瀞は,ゴルジュの両側からシャワーのように滝が落ちる非常にきれいな場所だった。浅いので,のんびり歩いて遡行できる。

 白金の滝は,滝のすぐ右手前から比較的小さく巻けた。一段登るとほぼ平らで歩きやすく,漏斗谷まで行ってしまい,少し引き返してきて下降した。

 漏斗谷出合。漏斗谷は大きな支流で,これを越えると水量はさらに減り,北又谷も普通の沢になってくる。
 

 2日目の高巻きで大変だったのは,三段の滝。人工で登っている記録もあるが,なかなか大変そう。流れのある中で水に浸かってルート工作することが必要になる。又右衛門滝の経験に照らすと,かなり大変だろう。対して巻きのルートは,左岸のリッジから急なルンゼを登ればよさそう。Leoさんも珍しく巻きモードなのか,今回は比較的あっさり断念し,高巻きに入る。
 

 行ってみるとルンゼはかなり急で,岩が積み重なっている関係でかぶっている部分も。ロープを出して慎重に登っていく。ルンゼの最上部のところに,残置ハーケンが2本。1本は手でさわっても動く状態。カムを入れて越える。

 トラバースをしていくが,短いロープでは降りられそうな場所がなかなかない。30mロープで降りられそうな場所には,捨て縄が残置されているのだが,手持ちのロープでは河原まで届かないだろう。

 さらにトラバースを続け,小さなルンゼから降りることに。探して探してようやく行き着いた場所だったが,ここにも捨て縄があった。考えることはみんな一緒なのか。時間はかかったが,無事,谷に復帰できた。
しばらく行くと,崩壊した残骸とまだ残っているスノーブリッジが出てきた。朝の流れの急変はやはりスノーブリッジの崩壊だった。幸い,スノーブリッジは短く,下を簡単に通過できる状態だった。
 

 3m滝。右壁を越えるのだが,最初の左へのトラバースがシビア。手はあるが足がない(沢靴では難しい小さなフットホールドしかない。)。

 いるかさんがトライ。カムを入れるが,下向きには効くものの横に引くと外れる。まあ,落ちても下は水なので平気なのだが。ハーケンを打って手がかりにしてトラバース。私も半分落ちながらどうにか越え,最後に荷物とLeoさんをひっぱりあげた。Leoさんの引き上げは荷揚げの比ではなく重くて大変。力を使い果たした。カラビナを使って荷重の方向を変え,自分の体重をうまく利用して引き上げる方法をマスターする必要がありそうだ。

 サルガ滝。これも高巻くしかなさそうだが,見たところ左岸を小さく巻けそう。

 サルガ滝手前は河原になっており,よいテントサイト。上流の様子がよく分からないので,ここで遡行を打ち切り。明日,早立ちしてがんばろう。ここは初日の幕場とは異なり,薪も豊富だった。

●3日目
 昨日までの遅れを取り戻すべく3時半に起床し,5時出発を目指すが,5時半になった。やはり2時間はかかるか。
 まずはサルガ滝の高巻き。左岸の小さなルンゼを登り,トラバース。懸垂1回で谷に降りた。これくらい普通の高巻きは今山行で初めて。
 さすがの北又谷もふつうの沢になっており,どんどん歩ける。1時間もかからずに二俣着。これで遅れはかなり取り戻せただろう。
 岩に妙な足跡らしきものが。先行者かと思ったが,付き方がおかしい。足跡の形も妙に丸い。爪の跡?があり,どうやら上流に向かって遡行している。飛沫がまだ濡れておりごく最近の足跡である。

 熊だ。しかし,熊も沢登りをするのか。双方逃げ場のないゴルジュ状の狭い沢の中でご対面したくはない。笛を取り出し,鳴らしながら歩く。二俣は右に行くのだが,プーさんも右に進んでいる。やれやれm,どこまで一緒なのか。みんなで森のくまさんを輪唱しつつ進む。奥の3つ又で,われわれは真ん中に入ったが,その後は足跡らしきものを見かけなかった。

 詰めに入る。だんだん傾斜が強くなり,数mの小滝が出てくる。ぬるぬるでもろいので,安全のため2回ほどロープを出して登った。

 水流の跡をたどり,さしたる薮こぎもなく,稜線へ。最後の最後で少し右に行きすぎた。稜線上には,かなり立派な切り開きがある。初雪山まで通じているのではないか。(せっかくなので,初雪山へ行ってみたい気もしたが,時間も押しているので,断念。帰ってから調べてみたら,平成19年に個人が,越道峠から初雪山までの登山道を完成させたらしい。
 http://hakusan.outdoor.cc/SAMPLE/hiho6478hatuyuki.html
 少しだけ登山道を下り,北又乗越へ。

 相又谷の下降開始。しばらくいくと滝が出てきた。巻き降りることもできなくはなさそうだが,懸垂。滝は2つ連続しており,30mロープなら1回だろうが,2回にわけて降りた。


 しばらく降りるとまた滝。ここは懸垂しかない。最後の難関か。ここも2回にわけて懸垂。2回目の懸垂点にはブッシュがない。落ち口の岩にハーケンを打って懸垂支点にする。Leoさんの軟鉄ハーケンと安全環付カラビナ,いるかさんのV字ハーケンを奉納した。私のロープも初日に切断したので,半分は1本懸垂練習に。残りは少しずつ捨て縄に利用。いろいろと奉納品の多い山行である。


 あとは,ヘロヘロになりながら,長い長い河原下り。バテて体が動かない。途中,堰堤で3回ほど懸垂。えらく時間がかかっている。京都雪稜は,すぐに林道に達したはずだが。堰堤に設置された鉄筋階段を支点に懸垂する場所があり(記録上,「鉄筋堰堤」とあるのは,おそらくこれだろう。),懸垂準備中にふと左岸を見上げると,コンクリートブロック擁壁が見えた。あとから思えば林道だったのだが,そのときは地図上の林道はもっと下流までしか記載がないことにとらわれていて,明らかな人工物である擁壁をみても,それが林道だと思い至らなかった。

 さらに河原の下降を続ける。そうこうするうち,ゴルジュが出てきて滝が出現。

 聞いてないぞ。左岸に林道が来ていて,みんなそれに上がっているため記録上記載がなかったのだが,頭が回っておらず,Leoさんトップで滝の左岸にある細い階段状のバンドを這い上がり,懸垂して沢へ降りた。


 しかし,人が通過したような形跡がない(ルート上には小石が乗っており,ここで懸垂だろう,というポイントにも,これまであれほどあった捨て縄がない。)。不審に思いつつさらに進むと,また,滝。こんどの滝はどう考えても普通には降りられない(懸垂すると滝身に行ってしまうしかない構造)。やはりどう考えてもおかしい。左岸に林道があるはずだから左岸を登ろうと少し戻って左岸を探すと,なんのことはないすぐ上に林道の擁壁が見えるではないか。拍子抜けしながら,林道まで這い上がった(途中,もろい岩壁登りが出てきて,私はロープを出してもらった。)。

 あとは,アブにまとわりつかれ,刺されながら1時間ほど林道を歩き,ダムまで戻った。やれやれ,ゴルジュや滝が出てきたときはどうなるかと思ったが,なんとか明るいうちに下山を完了できた。

 小川温泉の不老館(古いほうの温泉)で温泉。500円。熱いお湯が体に染みる。空腹だが食べると睡魔に襲われる。南条SAまで何も食べずに車を走らせた。南条で運転を交代してもらい草津まで爆睡。家に帰りついたのは1時少しまえだった。



【後記】
  さすがは5級の沢。沢山の試練を与えてくれた。しかし,というか,しかも,というか,非常にきれいな沢だった。
 魚止滝は,昔の記録よりもかなり高くなり復活している(大昔の姿ではないが。)。
 又右衛門滝,三段の滝を登るのであれば,それなりの準備が必要だろう(今回持参の装備以外に,フィフィ,あぶみ,ナッツなど)。高巻きは大変なので,がんばって登ったほうが良さそうだ。


      


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