あこがれの槍ヶ岳(北鎌尾根) 報告:BAKU

 幼い頃から一度は登ってみたかった槍。その槍にclifさんと二人で行ってきました。
 それも一般ルートじゃなくって北鎌尾根から。clifさん曰く、「何度も北アルプスを縦走している人ならともかく初めて槍に登る人で北鎌ルートを選ぶ人はおらんやろうな」だってさ。そう言われてみればそうかも知れない。
 今回はグッドなタイミングでclifさんが誘ってくれたのでこの山行が実現したのです。clifさん、どうもありがとう。

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【山域】北アルプス(槍ヶ岳)
【日程】8月12日〜14日
【行程】
  8月11日 大阪〜信濃大町
  8月12日 信濃大町〜高瀬ダム〜水俣川(遡行)〜天上沢〜北鎌右俣
  8月13日 北鎌右俣〜北鎌尾根〜槍ヶ岳〜殺生ヒュッテテン場
  8月14日 殺生ヒュッテ〜上高地〜信濃大町(車の回収)〜大阪(15日早朝着)
【メンバー】 clif(囲炉裏)、BAKU(沢雪山歩)
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8月11日(日)
 予定通り自宅を午後4時に出発。奈良のclifさん宅経由で名阪国道を目指す。心配していた渋滞もほとんど無く名古屋市内を通過して多治見より中央道に乗る。家から片道430km何とかその日の内に信濃大町に到着した。明日高瀬ダムまで予約している名鉄タクシーの営業所が分からず駅に向かった。そこには同じ会社のタクシーが客待ちしていたので教えて貰う。
 その日のテントはタクシー会社の目の前の公園で張ることにした。

8月12日(月)

 5時頃起床。もう一度これからの装備など忘れ物がないか念入りに点検を済ませ6時前にタクシー会社を出発。なかなか感じの良い運転手さんであった。4年前はここからダムまでは7、030円と聞いていたがその金額を過ぎてもタクシーは走り続け心配になって来た頃、7、660円でメーターを倒してくれた。これが無ければ9、000円近くになっていただろう。七瀬のゲートで時間待ち。
 タクシーは10台ほど並んでいた。ここで登山計画書を提出し係の人に天気の様子を聞くと「下り坂に向かうでしょう」(゜◇゜)ガーン
 
 高瀬ダムに6時45分到着。他の客は烏帽子岳方面に登るのだろうか?結局湯俣に向かうのは我々2人だけだった。
ダム湖畔を湯俣を目指して歩き始める。ここで時間を短縮しとかないとと思いペースはかなり速い。天気は薄曇り。一部晴れ。

 8時30分 水俣川に架かる吊り橋に到着。
 今日の行程は2部に分かれてここから遡行する。第1部は千天出合まで。第2部は北鎌右俣まで。
 まず第1部。左岸から取り付き高巻き、嫌らしい泥付き斜面のトラバースはあると言う物のグレードは沢慣れしている人には高くない。
 しばらく進むと河原に降りた。ん?そこには以前の報告には無かった右岸へ導く倒木が横たわっていた。それも歩きやすいように細工して。
 ここからほとんど右岸を遡行。水量はそんなに多いと思わないがヘタをして落ちればかなり流されるかも?慎重に歩く。
 中東沢を通過し、無理矢理倒木をよじ登ったり、何故か沢を4回徒渉して先に進む。濡れた倒木や岩はホント良く滑る。6m程の倒木の上を歩くときは冷や汗たらたら。何せ滑って落ちたら川の中(__;)
 ヌルヌルの石は登山靴では大変辛い。乗り越しに失敗して膝まで水浸し。徒渉を強いられたので沢靴に履き替える。水が冷たく渡り終える頃には痺れて感覚が麻痺していた。それを今回5回もやったのだからマイッタマイッタ。ルートの読み違いなのか?
 千天出合の最後の徒渉地点(みんなが渡っているところ)は水流がきつくclifさんとスクラムを組んで事なきを得る。この地点だけは赤いリボンが木にくくりつけてあった。と言うことはこれ以前の苦労は? まぁ、全てノーザイルで渉れたのだから良しとするか。
 この地点、従来の報告では「流されて橋の残骸が残る」ってあるが私が見た限りでは残骸は無かった。

 10時30分 千天出合に到着。ここから第2部の天上沢に入る。右岸を行くのだが高巻きが多くて大変だ。巻きすぎて引っ返す事数回。
 それでも沢筋を忠実に見逃さずに辿っていてば迷うことはない。
 疲労が増してきているのか、それともclifさんのペースが速いのか?足が思うように上がらない。何度も休息を要求する。
 天気は時折小雨が降る程度。そんなにその雨もつらくない。暑くもなく寒くもなく丁度いい。

 12時30分 貧乏沢出合に到着。ケルンが積んであり木の枝にも赤リボンが吊してあった。 20分ほど小休止。
 ここからは谷は穏やかさを見せ始め河原歩きに変わる。テン場に最適な場所があちこちにある。

 13時10分 北鎌沢出合に到着。何故かここには「赤いたばこの旗」が立てかけてあった。伏流になっているのか水が無い。
 この先水場が無いとの事なので有るだけのペットボトルを持って水を汲みに戻る。
 前々からの打ち合わせで午後3時までにここに到着したなら早い夕飯を食べてコルまで登ってしまう事になっていた。
 今は何とか天気も持っているが下り坂に向かっていると聞いていたのでちょとでも時間と距離を稼いでおきたかった。
 かなり早いがカレーの準備。ラッキーな事にそばにEPIのガスが転がっていた。持って見ると重たい。持参したガスを節約したいのでこれを使わせて貰うことにする。アルファー米は袋のままお湯につけると思っていたがclifさんは封を切ってお水の中に入れて炊いている。
 おかしいな?って思いながら私も同じようにしている。まぁ、気にしない気にしない(^^ゞ
 しばらくそのまま炊いていたらやわらかくなった。それにしてもえらい早い時間の晩ご飯やな〜。

 14時40分 お腹も一杯になり さぁ、これからコルまで700mのコンタを稼がねばならない。気合いが入る。しかしザックを持った途端フラフラ。ここから水を担いでいるのでザックは予想外の重たさになっていた。
 相も変わらずclifさんのペースは速い。体力不足の私は終始その勢いに引っ張られていると言った感じ。
 ここからもclifさんは先を歩いていた。そこが北鎌右俣だと思って.......
 体力の差なのか?急ごうと思えば思うほど動悸、息切れが激しくなる。5歩歩いて呼吸を整えると言った調子。先が思いやられる。
 そうこうしている内に姿が見えないくらいまで離されてしまっていた。
 100m程コンタを稼いだところであれ〜??ここは何処?
 ひょっとしたら左俣に入り込んでいるんとちゃうん?地形図で確認したらやっぱりそう。間違っているぅ〜(^_^;
 そう言えば登って直ぐに藪で見にくくなっていたが一本右から谷が入っていたなぁ〜。
 それで先行しているclifさんを呼び戻そうとするが沢の音で私の叫びが全く聞こえない様子。どんどんと先に行ってしまう。
 もうこうなったら沢での武器であるホイッスルをザックから出してきて止めようとするがそれも聞こえないのか?
 そうこうするうちに姿が見えなくなってしまった。私は相変わらずカメ状態。

 それから30分ほど過ぎたかな?clifさんが先の方で立っている。あれぇ??その先に見える白い物は何だ?
な、何と雪渓\(◎o◎)/!

 こりゃえらいこっちゃ。完璧にルートから外れているやんか。

 折角登って来たのに引き返すしか術はない。右股へトラバースも考えたが時計を見たらもう4時前だった。これ以上のリスクを避けたいので北鎌沢右俣出合まで戻ることにした。これからが身体が言うことをきかない。さっき以上に疲労感が増しもうこの辺りでビバークしようと申し出る。都合の良いことに沢から数メートル左に岩小屋が見つかった。何とか2人は寝れて雨が降ってきても濡れずに済みそうだ。

 テントは張れないがそんなに気温も下がっていないのでここを今日の寝床に決める。
 ホッとして休んでいると相棒はもう少し上まで上るともう少しましなテン場が有るかも知れないので探しに行って来ると言って空身ですっ飛んで行ってしまった。待っていてもなかなか戻って来ない。雨が強く降ってきたので少し心配だ。ひょっとしたらコルまで行ったのか?と思っていたら「片道30分でコルです」と言って戻ってきた。ほんまに元気なおっさんや!テントが一つ張ってあって中の人に挨拶までしてきたそうだ。
 
 突然どこからか人が現れたのでビックリしただろうな。このテントの人達が次の日、我々の前に歩いていた関東の4人組だった。
 clifさんが戻って来て安心したワタシはまだ外は明るかったけど直ぐに眠りについた。

 ビバークの経験は初めてだけど今回は標高2.050mの地点でありながら割に快適に一晩を過ごせたと思う。風が無風状態であったのが幸いしたのかも知れない。

 私が起きた時には雨は止んでおり真っ正面に見える喜作新道の稜線、天上沢の上流部がハッキリ見えるほど明るくなっていた。

 ラーメンに餅を入れて朝食を済ませ5時30分に行動開始。一晩十分に寝たので体力は回復していた。
 登山靴と靴下はまだ乾いておらず履き辛かったのでザックを整理していたら二股の靴下が出てきたのでここから沢足袋で登ることにした。
 ヘルメットを被り沢靴を履き、これは全く沢登りの格好と一緒や(^^)

 6時30分 コルに到着。clifさんが昨日挨拶したと言う先行者はもういなかった。
 さあ、ここからが今回の山行のハイライト!! 気合いが入る。 天気は回復の方に向かっている様子。心配なさそうだ。
 急な痩せ尾根は想像していたよりも踏み跡もしっかりと付いており歩きやすかった。
 しばらく歩くと見事にボロボロに痛んだ単独用のテントが木に引っかかって残置してあった。ここで誰かが遭難しなのだろうか?
 足取りも軽く快適に高度を上げ7時30分に天狗の腰掛(P9:2749m)を超える。次の目標は独標だ。
 7時50分 正面に独標が見えかけたところで大きく岩峯を巻いている先行者の姿が視界に入る。やっと追いついたと思うと一安心。

 ここから見るとかなりヤバそうなバンドを横切っているように見えるが実際その地点まで行ってみると大したことはなかった。
直ぐに4人パーティーに追いついた。僅か数メートルのトラバースをイヤがってザイルを出している。ザイルが必要と思われる所にはハーケンが打ってあるのでそんなに心配はない。我々もそれにつられて?今回初ザイルが登場した。しかし途中ちょっとカラダを乗り出す程度でそんなに難しい箇所はなかった。でも油断をして滑落してしまうと千丈沢まで持っていかれるので慎重に。この先ハング状の先を横切りチムニーへ。

 残置ザイルを使わせてもらう。高度感だけが凄いだけでホールドはしっかりとしており岩慣れしている人なら全く問題はないと思う。
 この先、ビレーの最中に先行者の一人がかぶっていたカーボーイハット風の麦わら帽子が「あぁ〜!」っとの一声と同時に強風で飛ばされて行った。 トレードマークが無くなったのでちょっぴり寂しそう。

 9時40分 終了点から直上で独標先の小コルに到着。

 気になっていた独標も難なくクリアーして小休止。ガスが薄れてきて大槍、小槍、孫槍3つまとめて全容を表す。こんなに間近に3つの槍を見れる
 なんて感動モノだ。これをバックに二人並んで記念写真をパチリ。
 つぎの目標は北鎌平。10時発。


 この先も大小のピークは登れる所は直登し巻けそうな所は千丈沢側へトラバースする。
この先、馬の背の稜線先を岩のぼりしようか?右から回り込もうか?と思案しているときに常念岳の方から山岳警備隊の巡回ヘリが飛来して来たが我々の様子をちょっと見てすぐに三俣蓮華岳の方に消えて行った。

 と思ったらすぐにこちらに旋回して我々がどのように登るかをじっと注視している。余りにも至近距離でホバリングしているので乗務員の姿も見える。
 何か恥ずかしいなぁ〜って思いながらもこちらも意識していたのでそれなりに楽しませて貰った(^^)
 10分ほどのホバリング。何か映画のロケをしているかのような印象だった。
 
 ここで関東の4人組がザイルを出して5mほどの岩峯を登っているので私たち2人は右のガレ場のトラバースを試みる。
 このトラバースで皆がザイルを出す所なのか?と思いながら途中から傾斜も緩くなりそんなに嫌らしくなさそうに見えたのでノンザイルで進んだ。
 ここの岩はボロボロと剥がれやすい。その先の尖った手裏剣みたいに薄い岩くずが蓄積されてガレ場を形成している。
 
 最初の2〜3歩は良かったがその次にBAKUが足を滑らし2m程体を谷へ持って行かれた(^_^;
制止しても止まらずもう2m滑りもう少しで止まろうとしていたらその勢いでもう2m流された。約6m滑落した所でようやく制止できた。
 やはりここはザイルが必要だったのか?横着をしては駄目だ!と反省させられる。その姿を上に残したclifさんと4人組に注視されていたので恥ずかしい気分。でも止まって良かったとホッとしていると左手の甲とひら、左足脹ら脛から血がにじんでいた。まぁ、これ位で済んだんだから良し!としておこう。

 12時30分。何度も巻き道を辿り北鎌平に到着。ここまではルートが錯綜しているので注意しなければならない。独標先の小コルから2時間半も経っているのにほとんど3.000m手前で高度は稼いでいない。太陽が時たま雲の間から顔を出し顔は火照っている。しかし強風のお陰で体温は上がらず水分も欲しくない。担いでいる水はまだ半分以上残っている。

 ここで大休止。先行の関東組みも休んでいる。

 13時10分 北鎌平を出発。時間は充分あるのでゆっくりゆっくり登る。登りになると相変わらず息苦しい。高度障害なのか?
昔、富士山に登ったときと同じような状況。

 13時40分 大槍の基部に到着。ここから槍ヶ岳山頂までは最後の登り。遠くから見ていたら何処をどのように登るのんだろう?と不安だったが間近で注視すると何とか登れそう。clifさんは右から回り込んで偵察に行った。ここの登れそうだけどシュリンゲが架かっている先が見えないとの事。

 ここまで来ると頂上で展望を楽しんでいる人たちの声が良く聞こえる。祠の裏から登って行くのは何だか恥ずかしいような嬉しいような複雑な気分。
 そこで本ルートなのか?関東組が先に取り付いている所の後ろに付かせて貰う。最初のチムニーに手間取っている。男性がザイルを流しその間に女性2人を挟み最後の男性は末端をハーネスに括り付けて登って行った。この後、あと一段登れば頂上の様だ。

 ここで6人が揃った。この先関東組がザイルを出して手間取っている。どうしても祠の真下からピークを踏みたい様子。すこし際どいチムニーを乗り越すのに難儀しているようだ。我々は待っているのも辛いのでそこから左を回り込んでいとも簡単にこちらも祠の真下?か真横?から念願のピークを踏みしめた。
 一般道を登って来た人は我々の姿をみて目を白黒させている。

 14時40分 北鎌尾根から槍ヶ岳のピークを制覇\(^^@)/ 
 目頭が熱くなり言葉に詰まる。まるで4年前の助役と一緒や〜(^^)V

 clifさんと堅い握手を交わす。そうこうしている内に関東の4人組も無事登頂していた。

 15時15分 下山開始。予想通り槍岳山荘のテン場は空きがなかったので殺生ヒュッテまで下り小屋前でテントを設営する。

 チキンライスを作りビールで乾杯! 槍のピークを北鎌から踏めたことを二人で祝う。何とも言葉で表現出来ない瞬間だ。
 この感激は一生忘れる事はないであろう。

 明くる朝は3時半に起きてご来光を見るためにもう一度ピークの登った。4時50分二度目の登頂。周りは我々以外に数人。
 5時過ぎ、一瞬だったがご来光を拝むことができた。その数分後(5時22分)に大槍のブロッケンを見れたのはもう最高にラッキーだったと思う。

ブロッケン現象 北鎌尾根を望む


 遙か向こうには富士山もハッキリと見えたし、もう何もかも万々歳!!


【後記】

 我々も適所と思われる所でザイルは4回ほど出しました。お守りで持って行ったザイルも役に立った。でも20mはちょっと短かったかな?と思います。出来れば最低30mあれば心強いです。


      


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